絵本の国際賞と原画展
絵本の表紙に記された受賞歴と、美術館で出会う原画展。その名前をたどると、子どもの本を支える国際的なつながりが見えてきます。賞が何を対象としているのか、どのように絵が選ばれるのかを知ることは、一冊の本や一枚の絵を読む手がかりにもなります。
国際アンデルセン賞 — 小さなノーベル賞
国際アンデルセン賞は、1953年にIBBY(国際児童図書評議会)が創設した、世界で初めての子どもの本の国際的な賞です。3年の準備を経て、1956年に第1回の授与が行われました。選考は隔年、つまり2年に一度行われています。
賞の対象は、歩みの中で変わってきました。初めの3回は本に贈られましたが、1962年の第4回からは、長く子どもの本に貢献してきた作家の全業績に対して贈られるようになりました。1966年の第6回には、作家賞と並んで画家賞が設けられています。一冊の本に贈られる賞と、作家が積み重ねてきた仕事を見つめる賞。その違いを知ると、受賞者一覧の読み方も変わります。
授与式はIBBY世界大会の中で行われ、受賞者には賞状とアンデルセンの横顔を刻んだメダルが贈られます。子どもの本が未来を拓き、平和を生むという理念から、「小さなノーベル賞」とも呼ばれています。
2026年の作家賞はマイケル・ローゼン(イギリス)、画家賞は蔡皋(サイコウ、中国)です。2024年の画家賞はシドニー・スミス(カナダ)でした。年と賞の部門をあわせて読むことで、それぞれの受賞を同じ賞の歴史の中に位置づけることができます。
日本の受賞者たち
JBBY(日本国際児童図書評議会)は、国内選考会で日本の作家と画家を選び、IBBYに推薦しています。日本の受賞者として挙げられているのは、赤羽末吉(1980年)、安野光雅(1984年)、まど・みちお(1994年)、上橋菜穂子(2014年)、角野栄子(2018年)の5人です。
2026年にJBBYが推薦したのは、作家賞の富安陽子と画家賞のあべ弘士です。推薦された人と、国際選考で受賞した人は区別して読む必要があります。賞の歴史、各年の受賞者、日本からの推薦は、JBBYの国際アンデルセン賞の解説と一覧に掲載されています。名前だけを追うよりも、受賞年や部門を確かめながら読むと、賞の仕組みがわかりやすくなります。
ボローニャ国際絵本原画展
ボローニャ国際絵本原画展は、児童書のためのイラストレーションのコンクールです。出版された作品だけでなく、未出版の作品も審査の対象となるため、新人作家の登竜門としても知られています。毎年1月に国際審査が行われ、選ばれた作品は春のボローニャ・ブックフェア会場で展示されます。
60回目となる2026年には、94の国と地域から4,158作品の応募がありました。国籍の異なる5人の審査員が選考し、日本を含む33の国と地域から75作品が入選しています。ここでの「入選」は、応募された絵の選考を経て展示作品に選ばれたということです。国際アンデルセン賞の作家の全業績に対する授賞とは、対象も仕組みも異なります。
JBBYが案内する2026年の国内巡回展の会期は、板橋区立美術館が7月8日〜8月16日、西宮市大谷記念美術館が8月22日〜10月18日、石川県七尾美術館が11月7日〜12月13日です。国際審査を経た絵が、日本の展示室へとつながる流れを示しています。
賞や展覧会の名前に同じ地名が含まれていても、名前を省略せず、何が選ばれたのかまで読むことが大切です。作家への賞と、応募作品を選ぶコンクールを分けて考えると、絵本をめぐるさまざまな評価を丁寧に受け止められます。
2027年、東京にIBBYが集う
IBBYは、85の国と地域が加盟する国際組織です。1953年の創設以来、子どもの本を通して国際理解を深め、平和な世界を子どもたちに手渡すという理念で活動しています。地域ごとに隔年で開かれる地域大会も、そのつながりのひとつです。
JBBYの第6回IBBYアジアパシフィック地域大会の案内によると、2027年の開催地は東京です。テーマは「本でつながる となりの国々」。会期は2027年7月10日(土)・11日(日)、会場は板橋区立文化会館とグリーンホールです。アジアパシフィック地域を中心に、国内外から約500人の子どもの本関係者が集まる予定とされています。
受賞者の名前、審査を経た一枚の絵、そして本に関わる人たちの集まり。いずれも、絵本を国や言葉の境界を越えて考える入り口になります。原画の線や余白をゆっくり見つめる時間に、こうした背景を重ねると、一枚の絵から広がる世界にも目を向けられます。