絵本原画展の記録
安曇野絵本館は、開館以来一貫して「絵本原画展」を活動の中心に据えてきました。印刷物としての絵本ではなく、作家が筆を置いたその一枚 — 原画 — を展示すること。それがこの小さな美術館の使命でした。このページでは、記録に残る展覧会をまとめています。
絵本の「原画」を観るということ
印刷された絵本では伝わりきらない筆致のゆらぎ、紙の質感、色の重なり。原画の前に立つと、絵本の絵が「子供向けの挿絵」ではなく、ひとつの独立した美術であることが、ことばを介さずに伝わってきます。絵本館が掲げ続けた「絵本の絵を子供の領域から解放する」という理念は、まさに原画展というかたちで実現されてきました。
展示の多くは海外作家の原画を中心に構成され、関連する書籍や版画とあわせて紹介されました。静かな石積みの展示室で、一枚の絵とゆっくり向き合う — それが安曇野絵本館の流儀でした。
記録に残る展覧会
スージー・ズー絵本原画展(2012年3月1日〜6月25日)
アメリカの作家スージー・スパッフォードの原画展。絵本原画のほか、初期のスケッチ画やグリーティングカードの原画、愛用の画材など貴重な資料が展示されました。展覧会の記録を読む
リスベート・ツヴェルガー絵本原画展(2012年6月28日〜9月3日)
国際アンデルセン賞画家リスベート・ツヴェルガーの、絵本館では4度目となる原画展。デビュー35年を記念し、初期作品から最新作までが並びました。展覧会の記録を読む
高畠純 絵本原画展(2013年3月20日〜6月24日)
ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞をはじめ数々の受賞歴を持つ高畠純さんの原画展。ユーモアに満ちた動物たちの世界が展示室を彩りました。展覧会の記録を読む
やぎたみこ絵本原画展(2013年6月27日〜9月16日)
『ほげちゃん』で知られるやぎたみこさんの原画展。デビュー作から最新作までの原画に加え、創作過程のスケッチや模型、手作りのぬいぐるみも展示されました。展覧会の記録を読む
スタシス・エイドリゲビチウス展(〜2014年2月23日まで延長)
リトアニア出身の画家スタシス・エイドリゲビチウスの展覧会。エロール・ルカイン、ルイーズ・ブリアリー、初山滋の作品もあわせて展示された、絵本館らしい奥行きのある企画でした。展覧会の記録を読む
記録の前史 — 1990年代からの歩み
上に挙げた展覧会は、たまたま記録が残ったものに過ぎません。リスベート・ツヴェルガーの原画展は2012年までに過去3度(1999年夏ほか)開催され、そのたびに大きな反響を呼びました。ドイツの画家ミヒャエル・ゾヴァさんが来館したこともありました。そして2017年の創立20周年には、来館された和田誠さんとの約束による「和田誠展」(仮称)が企画されていました(来館の記録)。約20年にわたる活動の全貌は、もう誰にも正確にはたどれませんが、その断片だけでも、この美術館がどれほど豊かな時間を紡いできたかを物語っています。
絵本原画という文化
絵本原画の展示は、いまでは日本各地の美術館で当たり前に見られるようになりました。子どもの本の文化を国際的に支える活動としては、国際アンデルセン賞を主宰するIBBYの日本支部JBBY(日本国際児童図書評議会)の取り組みがよく知られています。また安曇野には、世界の絵本画家の作品を体系的に収蔵するちひろ美術館があり、絵本の絵を美術として扱う文化がこの土地に深く根づいています。安曇野絵本館の原画展は、その大きな流れの中の、小さくとも確かなひとつの源流でした。